ADVATEK テクニカルガイド 【Vol.3 大規模ピクセルライト演出のための IGMP Snooping 解説】
ADVATEK テクニカルガイドVol.3
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第3回となる本記事のテーマは「大規模ピクセルライト演出のための IGMP Snooping 解説」です。
それでは早速、本編をどうぞ!
大規模ピクセルライト演出のための IGMP Snooping 解説
▼はじめに
ピクセルライトの演出では、多数のpixel controllersに大量のデータを高速で届けるネットワークが必要です。コントローラの台数やDMXユニバース数が増えるほど、ネットワークへの負荷も大きくなります。
設計の不十分なネットワークでは、パケットの欠落や接続の不安定化が起きることがあります。
▼問題点
下の図は、大型LEDスクリーンを2台のPixLite E16-S Mk3で制御している構成例です。
2台のコントローラと送信ソフトは同じネットワーク上で動作しており、各PixLiteは96DMXユニバース分のピクセルを制御するよう設定されています。
IGMP Snooping(詳細は後述)を使用しない構成では、2台のコントローラがそれぞれ192ユニバースものDMXデータをすべて受信してしまいます。各コントローラは受信した大量のDMXデータを処理し、そのなかから自分が必要なものを判断しなければなりません。
その結果、各PixLiteのプロセッサには大量の不要なデータが流れ込み、処理が追いつかなくなってパケットの欠落が発生し、LEDスクリーンの品質低下につながります。
▼解決策
ネットワークを正しく設定した Multicast 構成では、DMXユニバースのデータをスイッチの必要なポートにのみ送信できます。
これを実現するのが、IGMP Snooping(Internet Group Management Protocol Snooping)と呼ばれるネットワーク技術です。
IGMP Snooping を使うことで、各PixLiteは自分が必要なDMXユニバースのデータだけを受信できるようになり、不要なデータの処理から解放されます。これにより、PixLiteに大量の不要データが流れ込むことを防げます。
▼IGMP Snooping とは?
sACN を Multicast で送信する場合、各DMXユニバースのデータはそれぞれ固有の「Multicastグループ」として送出され、ネットワークスイッチに届きます。pixel controller がいずれかのグループへの受信要求を送っている場合、スイッチはそのグループのデータを対応するポートに転送します。
IGMP Snooping は、各デバイスがどの Multicastグループへの受信要求を送っているかをスイッチが把握し、必要なグループのデータだけを各ポートに届けるための仕組みです。この機能を使うには、pixel controller と送信ソフトが Multicast に対応した通信規格(sACN など)で動作している必要があります。なお、Art-Net は Multicast のデータ配信に対応していません。
IGMP Snooping を効果的に機能させるには、十分な数の Multicastグループをサポートし、IGMP Query * にも対応したネットワーク機器が必要です。これらの条件が整えば、IGMP Snooping の恩恵を活かして各PixLite に必要なデータだけを効率よく届けるネットワーク設計が可能になります。
* IGMP Query とは、ネットワーク上のデバイスに「どの Multicastグループが必要か」を問い合わせる仕組みです。この問い合わせを定期的に送る役割の機器を「querier(クエリア)」と呼びます。
▼スイッチによるグループ管理の仕組み
Multicast では IGMP を活用して、各デバイスが必要な Multicastグループへの受信要求をネットワーク上で通知し合います。
また同様に、ネットワーク上のどの機器からでも他のデバイスに「必要な Multicastグループを申告してください」と問い合わせることも可能です。
ただし通常、ネットワーク上の querier(クエリア)は1台のみで、ルーターまたはクエリ送信の設定をされたネットワークスイッチがその役割を担います。
sACN で動作している PixLite コントローラは、Ethernet ポートがネットワークに接続(または再接続)されると、必要な DMXユニバースへの受信要求を IGMP メッセージとして送出します。このメッセージは電源投入時にも送出されます。
これらのメッセージは接続先のネットワークスイッチによって途中で読み取られ(Snooping)、スイッチはそのDMXユニバースのデータを該当ポートに転送するよう記録します。
複数のコントローラが接続されていくにつれ、スイッチは各ポートが必要とする Multicastグループの一覧を蓄積していきます。
このプロセスを継続的に維持するのが、querier の役割です。多くのネットワーク機器が querier として動作するよう設定できますが、通常はルーターがその役割を担います。
前述のとおり、ネットワークスイッチに割り当てることも可能です。
照明用ネットワークは外部ネットワークから独立して運用されることが多く、ルーターが存在しない場合もあります。その場合は、いずれかのネットワークスイッチを querier として設定する必要があります(この機能に対応していないスイッチもあります)。
querier は定期的にネットワーク上の全デバイスへ IGMP Query を送信し、必要なグループがあるデバイスはそのグループへの受信要求を返答します。
問い合わせの間隔はネットワーク設定によって異なりますが、IGMP タイムアウト値の少なくとも2倍の頻度が推奨されます。
▼ネットワークスイッチの選び方
ネットワークスイッチはさまざまな形状・サイズ・価格帯で提供されています。
IGMP Snooping を使用する大規模な照明演出では、適切なスイッチを選ぶことが重要です。まず確認すべきポイントは、managed switch(設定可能なスイッチングハブ)であることです。managed switch はブラウザから設定を変更できる点でルーターに似ています。
一方、unmanaged switch(設定できないスイッチングハブ)は設定不要で動作するよう設計されています。managed switch では IGMP Snooping、IGMP Query、VLAN などの設定が可能です。IGMP Snooping を使用するには、managed switch が必須です。
なお、ほとんどの managed switch は IGMP Snooping に対応していますが、選定する製品が対応しているかどうか必ず確認してください。
managed switch は物理的なサイズや Ethernet ポート数もさまざまです。
自分の用途に合った managed switch を選ぶには、pixel controllers に転送する必要がある Multicastグループの数を事前に把握しておく必要があります。
managed switch がサポートできる Multicastグループ数にはメーカーが定める上限があり、ポート数を増やしても必ずしもこの上限が上がるわけではありません。
小型の managed switch では128グループが上限となっているものが多く見られます。スイッチの上限を超える数のグループが届いた場合、設定に応じて超過分のパケットを全ポートに Broadcast するか、ドロップするかのいずれかの動作になります。
超過分を Broadcast した場合は PixLite に処理しきれない量のDMXユニバースが流れ込み、ドロップした場合は必要なパケットが正しい PixLite に届かなくなります。
いずれも重大な問題となりうるため、慎重に検討が必要です。
下の1つ目の例では、スイッチを1台のみ使用し IGMP Snooping を有効にした構成で、超過グループを Broadcast する設定になっています。この場合、両方の PixLite が処理しきれない量のデータを受信してしまいます。超過パケットをドロップする設定に変えたとしても、必要なパケットが正しい PixLite に届かなくなるため、設計として成立しません。
この問題を解決する方法のひとつが、core/edge 構成による複数スイッチの活用です。
コアスイッチ(core switch)が送信ソフトからすべての Multicastグループを受信・転送し、エッジスイッチ(edge switch)はコアスイッチからすべての Multicastグループを受け取りつつ、接続された pixel controllers が必要としない超過パケットをドロップします。
2つ目の例では、各エッジスイッチが Multicastグループの上限を超えることなく、接続された PixLite に必要なDMXユニバースのデータを過不足なく届けられています。
これは簡略化した図です。実際には各エッジスイッチに複数の PixLite コントローラが接続されます。ただし、各エッジスイッチに接続された PixLite が使用するDMXユニバースの合計数は、そのスイッチの Multicastグループ上限内に収める必要があります。
この例ではネットワーク上に IGMP の querier として機能するルーターがないため、スイッチがその役割を担う必要があります。querier は1台のみ必要で、コアスイッチに設定するのが最も合理的です。この設定方法については後のセクションで解説します。
▼IGMP Snooping のネットワーク設定
必要な要件を満たすネットワーク機器を選定したら、各機能の設定を行います。
まず、IGMP Snooping を有効にします。core/edge 構成を採用している場合、コアスイッチ側は IGMP Snooping を無効のままで構いません。
エッジスイッチ側で IGMP Snooping を有効にします。以下は Cisco SG300-52 での設定例です。
このスイッチは6つの VLAN が設定されており、まずグローバル設定で IGMP Snooping を有効にし(上)、続いて必要な各 VLAN に対して個別に有効にします(下)。
次に、スイッチが処理できる上限を超えた Multicastグループが届いた場合の動作を設定します。超過分のグループをドロップするか Broadcast するかを選択できます。
エッジスイッチでは、受信する Multicastグループ数が送信する数を上回ることがあります。受信グループ数が IGMP Snooping の上限を超えていても、送信するグループ数が管理できていれば、超過した受信パケットをドロップする設定にするだけで問題ありません。
以下は Cisco SG300-52 での設定例です。このスイッチは52ポートあり、ポートごとに設定が必要です。ポート1〜24(①)はエッジスイッチとして超過した受信パケットをドロップする設定、ポート25〜52(②)はコアスイッチとして超過した受信パケットを転送する設定になっています。
最後に、いずれかのネットワークスイッチを IGMP の querier として設定する必要があります(前述参照)。以下は Cisco SG300-52 での設定例です。IGMP Snooping と同様に、グローバル設定と各 VLAN への個別設定が必要です。
各設定の詳細な手順については、ネットワーク機器メーカーの公式ドキュメントを参照してください。
▼最後に
いかがでしたか?
IGMP Snooping は、大規模なピクセルライト演出でネットワークを安定させるための重要な技術です。適切な managed switch の選定と core/edge 構成を組み合わせることで、各 PixLite に必要なDMXユニバースのデータだけを効率よく届けることができます。
ネットワーク設計や機器選定でお悩みの方は、お気軽に裏方屋までご相談ください。
本記事は、Advatek社の記事を許可を得て翻訳・掲載したものです。
(原文:IGMP Snooping Guide )
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