ムービングライト購入の際に考えるべきこと

ムービングライト購入の際に考えるべきこと

初めてのムービングライト」では、初めてムービングライトを買われる方に向けて、どのように機材の選定を行ったら良いかを解説しました。

限られた予算をどう使う!レンタル?購入?ブランド品?」では、独立起業した方の会社の成長をモデルにどのようにムービングライトを揃えていくかをシミュレーションしてみました。

今回は、裏方屋が考える「ムービングライトを購入する際に考えるべきこと」です。

ムービングライトを購入する際に考慮すべきことの中で、機能や価格以外で意外と見落としがちな側面を改めてまとめてみました。

協力会社は何を持っているのか?

現場はあるけど、機材が足りない。
そんな時に考えるのは、追加購入かレンタルか、ということではないでしょうか。

場所も限られた日本の土地事情。仕事のたびに機材を追加していけば、管理費(倉庫代、人件費)が膨れ上がります。倉庫代や機材管理のための人件費は利益を圧迫するランニングコストです。
一度コストがかかり始めたらそれを減らす事は難しいということをよく考えてみてください。

出来るだけ協力会社と同じ機材を揃え、お互いに貸し借りをしてコスパの良い運営をしましょう。

使う現場のタイプを理解する

どの機能が必要なのか?本当に必要な機材を選定する必要があります。

例えば......


防滴の機材を買うか悩むAさん
基本的に得意としているのは屋内の照明。モール内のステージイベントの照明をやったり、演劇やミュージカルも得意としている。
去年、知り合いに頼まれて地元の屋外フェスの照明をやったのだが、今年も依頼された。雨天になる可能性を考えると、防滴の機材を購入したほうが良いんじゃないだろうか。

ただ、ちょっと高いんだよなぁ......

POINT
  • 90%は屋内現場、残りの10%は屋外現場
  • 防滴対応が理想。防滴は流行っているし、どんな現場でも対応しているという利点があると考えている
  • ただし、屋外現場専用機材は、高価で、重く、修理も難しい

この場合、90%が屋内現場なのに、10%の屋外現場のための機材に投資をするのは間違いです。
屋外現場の際には、防水タイプをレンタル、もしくは自社の機材に防水カバーをかければよいと考えましょう。

例えば......


ビームの出る機材を買いたいBさん
主戦場は劇場。演劇やミュージカルの照明をプランから当日のオペレーション手配までやっている。
ここのところ、知人の紹介でライブやコンサートを頼まれる機会が何度かあった。
演劇と歌物はやっぱり勝手が違うなと感じている。

他の人のライブの照明などを見ていると、細いビームが出る機材はやっぱり歌物イベントだと映えるし「かっこいい」明かりになりそうだなーと思っている。

POINT
  • 90%は劇場で演劇がメインの仕事、残りの10%は歌物イベント
  • 細いビームが出る機材が歌物イベントで使えたら「かっこいい」明かりが作れると思う

90%が劇場で演劇がメインの仕事なのに、10%のため細いビーム機材に投資をするのは間違いです。
明かりの広がりが十分にありカッター機能が付いているもので代替する事を検討しましょう。
そして、演劇の現場であなたの個性や感性を表現するのにより活躍する、比較的静かで色味の良いムービングライトの導入を優先しましょう。
どうしても使いたいという場合は、レンタルです。

例えば......


大型ムービングライトを検討しているCさん
毎週末なんらかのイベントの現場仕事をこなしてとても忙しくしている。
イベントの規模は商店街の催し物やモールでの催事、劇場での演劇やミュージカル、公民館での発表会、地元で行われるお祭りや、公園で開催されるイベントなど、屋内外を問わず多岐に渡っている。
週末は乗り打ちで現場をこなし、平日はその手配と準備に追われる毎日だ。

2年ほど前から、年に1~2回ホールツアーの仕事が来るようになってきた。LED1,000w級の明るい大型のムービングライトを思い切って購入しようかと思っている。

POINT
  • 90%は日替わりで乗り打ちの中小規模イベント現場仕事、残りの10%はホールツアー
  • ホールツアー用にLED1,000w級の明るい大型のムービングライトを思い切って購入したいと思っている

機材を毎日色々な現場に持ち込み、吊り込み、本番、バラシなどの動きの多い仕事が90%なのに、10%のツアーために大型で重いムービングに投資をするのは間違いです。

最初に考えるべきことは、軽量で、仕込みやすく、移動にも耐えられるような信頼のある機材。さらに贅沢を言うなら、機能面が良いものであれば最高!という考えで機材を選んでください。
日々、現場仕事をする上で体に出来るだけ負担の少ない機材選びをしましょう。どうしても使いたいということであれば、そう、レンタルです。

利益が十分に出る仕事があるか

ムービングライトは他の照明機材と比べ高価です。
利益が十分に出る、機材購入金額の元が取れる仕事を持っているのか?ということをシビアに見つめる必要があります。

ただ機能が良いから、使ってみたいからという理由でのご購入はお勧めしません。お金はないけどフェラーリに乗りたいから購入したというのと同じです。この考えは間違っています。

もしも高額機材をすでに購入された場合は、その機材が人気なうちに販売してしまうことをお勧めします。高級機材は、仕事が減ってしまった場合、メンテナンスなどの維持費、倉庫代などの家賃がジワジワと経営を圧迫する要素になります。

機材の貸出をするか

自社現場で使うだけでなく、手持ちの機材を他社に貸し出しするかどうかは重要です。手持ちの機材をただ眠らせておくだけではなく、自社の現場がない時にも貸し出すことでお金を生み出してくれる。そう考えると”貸出”はとても魅力的です。

本気で機材の貸出を事業の一部にするなら、有名メーカーのAランク機材を数多く持たないと成立しません。今これを読んでいる方は、レンタル会社を目指しているわけではないと思いますので、その場合に考慮すべき点を書きたいと思います。

機材の貸出をするなら「投資金額」と「オペレーションコスト」については、よくよく計算しましょう。

「投資金額」

借りたい人の要望に常に応えていくには、機材の十分な台数確保や最新機材の購入が必要になります。つまり、資金力が必要不可欠です。
さらに、急なトラブルを想定して代替え機の用意や交換パーツの購入もしておく必要があります。
貸出中のトラブルへの対応も含んでの「レンタル事業」だからです。

自分たちで使用する事を目的とした機材よりも、貸出を目的とした機材のほうがしっかり初期投資をして万全の体制を整えておかなくてはならない、としっかり認識しましょう。

もちろん、代替え機や交換パーツを無限に準備しておくことはできませんから「万が一、機材が足りない場合や故障した際に同機材を提供してくれる会社があるかどうか」も重要なポイントです。

「オペレーションコスト」

貸出を行う場合には、その都度メンテナンスが必要になります。そのためのオペレーションコスト(人件費、保管場所代)は馬鹿になりません。
機材の貸出を考える時には、まずは貸し出しに対応するための資金、人材、時間があるのかどうかを見極めることが必要です。

対応するための資金、人材、時間、とは具体的には

  • レンタルの受付、スケジュール管理などの事務処理をする
  • 貸出があった際に出荷前と返送直後に動作確認をする
  • 機材の入出庫などの移動スケジュールを管理する
  • トラブル発生時に、解決するまで対応する
  • 貸し出す機材、眠っている機材、修理中の機材などを整理し管理する場所を確保する
などを指します。

まず最初は自分の近くにいる、普段から仕事を回しあっている仲間や、似たような機材を持っている協力会社との間での貸し借りから始めましょう。
その上で「見知らぬ大勢の方たちをお客様とした時に継続的に続けていけるか」を、実際の現場のスタッフたちとよく話合い、見極めるのが良いかと思います。

なかま

メンテナンスと予備パーツは必須

ムービングライトのメンテナンスに欠かせないのは下記の2点です。

1: 定期メンテナンス

可動部の多いムービングライトを長く使うためには、定期メンテナンスは必須です。車検と全く同じ考えです。

現場仕事で忙しい毎日を送っていると忘れがちですが、一年に一度はきちんとメンテナンス期間をスケジュールした上で、メンテ作業をしましょう。カバーを開けての埃取りとレンズの清掃をするだけでも機材を長く使えうための第一歩となります。

2: 予備パーツの確保

特に劣化するパーツとして、ファン、LEDドライバー、ベルトやシャフトがあります。LED自体も、経年と共に光量が落ち始めます。いざ故障パーツが判明して取り替えたい、となった場合、輸入製品が多いムービングライトにおいては、パーツの取り寄せだけで数ヶ月かかる、もしくはいつのまにか廃盤でパーツ入手不可、という事態が起こりがちです。

機材購入時に、販売店に「どのパーツに不具合が起きやすいか?」などを聞いておいて、予備のパーツを同時に購入しておきましょう。

今回のまとめ

いかがでしたでしょうか。これまでの記事でも書いてきた事の繰り返しではありますが、何かの参考になれば幸いです。

何かに迷った時、誰に相談したら良いかわからない時、背中を押してもらいたい時は、ぜひ裏方屋にご連絡ください。
いつでも親身になってお応えします。

次の記事では、これまでとはちょっと違う具体的なお金の話。
「少額減価償却資産の特例」に関する記事の予定です。

お楽しみに!!